抗血小板剤
抗血栓療法の内、白色血栓に用いる抗血小板療法についてのメモ。
白色血栓は血流の速い動脈内で形成される血栓で、動脈硬化による血管の狭窄部位周囲で血液の乱流が起こり、
その刺激で活性化された血小板が血栓形成の要因となる。
血小板の含有量の多い血栓(血小板血栓)が形成され、血小板(platelets)が白いので、白く見え白色血栓といわれる。
(血流が速いと、血小板が活性化されやすい。血小板に対する「ずり応力(shear stress)」が血小板活性化のシグナルになる。)
白色血栓の形成を防ぐには抗血小板療法を行う。
高血圧による血管内皮の損傷、高脂血症による動脈硬化の進展、喫煙・DMなどによる血管への影響なども考慮。
代表的な疾患は、心筋梗塞、脳梗塞(心房細動が原因の脳梗塞を除く)、閉塞性動脈硬化症。
アスピリン、チクロピジンが主だったが、シロスタゾール、プラビックスに国産のエフィエントなど増えてきた。
COX-1阻害
COX (Cyclooxygenase):アラキドン酸をプロスタノイドと呼ばれる生理活性物質の一群に代謝する過程に関与する酵素。
プロスタノイドにはプロスタグランジンやトロンボキサンなどのアラキドン酸代謝物が含まれる。
3つのアイソザイムがあり、それぞれCOX-1、COX-2、及びCOX-3と呼ばれる。
COX1は全身組織に常時発現しており、PGE2やPGI2を産生することにより胃酸の分泌の抑制、止血、腎血流維持など多様な働きを有する。
PGE2は、炎症促進作用により、疼痛や、発熱などを来たす。(が、PGE2は、炎症抑制作用があり、炎症性サイトカインの産生を抑制する。)
血小板でのTXA2 (トロンボキサンA2)の合成は、主にCOX-1による。
TXA2には、血小板凝集作用、血管平滑筋収縮作用、気道平滑筋収縮作用がある。
血小板の活性化には細胞内Ca2+濃度の上昇が必要だが、TXA2が血小板膜上の受容体に結合すると細胞内Ca2+濃度が上昇。
PGI2は、発痛増強物質であるが、血小板凝集を抑制したりTXA2とは相反する作用を示し、この両者の生成のバランスが保たれている。
COX2は炎症反応により誘導される酵素であり、炎症部位でPGE2やPGI2を大量に産生し、痛みを引き起こす。
なので、COX2選択的阻害剤は胃腸障害や腎臓障害などの全身症状が出現しにくいという期待されるが、TXA2の生成は阻害せず、
PGI2を阻害するため、血小板凝集や血管収縮を起こしやすく、心筋梗塞などの心血管イベントを増やしてしまう。
COX-3は、アセトアミノフェンに特異的に阻害され、痛みの知覚に関与する。
NSAIDsによってCOXが阻害されると、TXA2の抑制によって血液がサラサラになるが、PGI2まで阻害すると凝集しやすくなってしまう。
これをアスピリンジレンマと呼ぶ。
アスピリンは、低用量で使用することによってTXA2だけを阻害し、血小板凝集抑制作用だけを得ることができる。
アスピリン(バイアスピリン:バイエル)
タケルダもアスピリン100mgを含む製剤。バファリン配合錠A81というのもある。
手術や心臓カテーテル検査、抜歯の予定のある場合、事前に医師と相談。抜歯くらいならそれほど心配ない。
血小板の寿命が7~10日なので、休薬するなら7~10日前から。
適応:A:① 次の疾患における血栓・塞栓形成の抑制//狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、
虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)
② 冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制
B:川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)
用法:A:アスピリンとして100mgを1日1回経口服用する。なお、症状により1回300mgまで増量できる。
B:急性期有熱期間は、アスピリンとして1日体重1kgあたり30~50mgを3回に分けて経口服用する。
解熱後の回復期から慢性期は、アスピリンとして1日体重1kgあたり3~5mgを1回経口服用する。
SE:(他の抗血栓薬との併用時は要注意)副作用の心配はそれほどない。消化管潰瘍・胃腸出血など。
薬価:2016 バイアスピリン錠100mg:5.6円
プロスタグランジン製剤
プロスタグランジンE1(PGE1)は血小板凝集を抑え、血管を拡張させる作用を持つ。cAMP含量を増加、TXA2生成抑制。
PGE1作用を持つ製剤。
リマプロストアルファデクス(オパルモン:小野、プロレナール:大日本住友)
血小板凝集抑制作用は投与180分で消失するので、手術や心臓カテーテル検査の予定のある場合、休薬は1日。
適応:A:閉塞性血栓血管炎に伴う潰瘍、疼痛および冷感などの虚血性諸症状の改善
B:後天性の腰部脊柱管狭窄症(SLR試験正常で、両側性の 間欠跛行 を呈する患者)に伴う自覚症状(下肢疼痛、下肢しびれ)
および歩行能力の改善
用法:A:リマプロストとして1日30μgを3回に分けて経口服用する。
B:リマプロストとして1日15μgを3回に分けて経口服用する。
SE:ほてり、頭痛や動悸。肝臓の症状:だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色
薬価:2016 オパルモン錠5μg:63.5円、プロレナール錠5μg:56円、(リマプロストアルファデクス錠5μg「サワイ」:24.9円)
ω-3 fatty acid
ω3はオメガスリー、n-3はエヌマイナススリー。
ω-3とは、炭素鎖のメチル末端から数えて3番目の炭素に初めて二重結合が現れるという意味。
メチル基の炭素はカルボキシル基炭素から数えて最後の炭素で、ギリシャ文字の最後のωを用いて末端を表す。
末端から何個目の炭素が不飽和か、ということ。
n-3も同じだが、カルボキシル基炭素を1として最終の炭素:nから3引いた炭素が二重結合になっているという意味。
エイコサペンタエン酸(EPA)だとエイコサなのでC20で最後は20位。
ω3だと後ろから数えているので、20,19,18となるので18位を指す。18位と17位が二重結合。
n-3だと20-3で17位を指す。17位から18位が二重結合。
結局同じだけど。…
ω-3脂肪酸の一つEPAにはエイコサのC20にペンタなので5つの二重結合があるカルボン酸。二重結合はシス型。
動脈の弾力性保持作用、血小板凝集抑制作用、高脂血症の改善、閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛、および冷感の改善などの効果。
血小板膜リン脂質中のEPA増加でアラキドン酸代謝の競合的阻害によるTXA2の合成阻害。
DHAはドコサは22なのでC22にヘキサなので6つの二重結合があるカルボン酸。二重結合はシス型。
主に中性脂肪を下げるために使われる。脳内にもっとも豊富に存在する長鎖不飽和脂肪酸なので痴呆に効果を期待する向きもある。けど…
ロトリガは高脂血症の適応しかない。LDLの上昇に注意が必要との記述も。
EPA(エパデール:持田)
血小板の寿命が7~10日なので、休薬するなら7~10日前から。
適応:A:閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善
B:高脂血症
用法:A:イコサペント酸エチルとして、1回600mgを1日3回、毎食直後に経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
B:イコサペント酸エチルとして、1日2回又は1回600mgを1日3回、食直後に経口服用する。
ただし、トリグリセリドの異常を呈する場合には、その程度により、1回900mg、1日3回まで増量できる。
SE:重い副作用はない。万一は肝臓の副作用が疑われる症状、鼻血など出血傾向
薬価:2016 エパデールS900 1包:105.4 円
PDE3阻害剤
重要なのはcAMP。細胞内Ca2+濃度の上昇を抑制する。
ホスホジエステラーゼ3(PDE3)はcAMPの代謝を行う。cAMPはTXA2による細胞内Ca2+濃度上昇を抑え、血小板の凝集を抑制する。
cAMPは、タンパクリン酸化酵素であるプロテインキナーゼA(PKA)を活性化する。
心筋において、PKAはL型Ca2+チャネル、筋小胞体ホスホランバン、筋小胞体Ca2+遊離チャネルをリン酸化する。
その結果、細胞内Ca2+濃度が上昇し、心筋収縮力は増大する。
平滑筋においては、PKAはミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)をリン酸化することによってMLCKを不活性化する。
その結果、アクチンとミオシンの滑走が起こらず、平滑筋は弛緩する。
アデニル酸シクラーゼ活性化やPDE活性抑制は、細胞内cAMP濃度を上昇させる。
カテコールアミンはβ受容体を刺激してcAMPの合成を促進する。
キサンチン誘導体(ティオフィリンなど)は、PDEを抑制することにより、cAMP分解を抑制し、細胞内cAMPの蓄積をもたらす。
cAMPは心筋収縮力のみならず心拍数を増加させる。
β2作用薬やPDE阻害薬は、気管支喘息の治療に使われるが、気管支平滑筋細胞内cAMP濃度を増加させると同時に心筋細胞内cAMP濃度を
増加させることがあるので、動悸や不整脈を誘発することがある。
抗血小板薬でも、血管拡張作用、動悸は見られる。
シロスタゾール(プレタール:大塚)
中止後48時間で血小板凝集能回復するので、手術前中止時期は3日前とされる。
★血小板凝集の抑制による抗血栓作用。
★血管拡張作用による、脳梗塞慢性期患者の血流量を増加。
★抹消動脈の血流量増加による下肢の結構導体を改善。
★慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛、冷感等の虚血性諸症状の改善。
適応:A:脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)発症後の再発抑制
B:慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善
用法:シロスタゾールとして1回100mgを1日2回経口服用する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
SE:重い出血(消化管出血、肺出血、脳出血、眼底出血)出血傾向、血便(赤~黒い便)、吐血、血痰、
頭痛、頭重感、動悸、狭心症、血液障害や肝障害、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、間質性肺炎など
薬価:2016 プレタールOD錠50mg:80.8円、100mg錠:144.2円、(シロスタゾールOD錠100mg「サワイ」:33.1円)
5-HT2受容体 拮抗剤
血小板には5-HT2受容体(セロトニン2受容体)が存在しており、この受容体の活性化がシグナルとなって血小板が固まるようになる。
血小板に存在する5-HT2受容体を阻害すれば、血栓の生成を抑制できる。
サルポグレラート塩酸塩(アンプラーグ:田辺三菱)
抗血小板作用は血中濃度に依存。中止後24~36時間で血小板凝集機能回復。
手術前中止時期は1~2日前とされる。
適応:慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛および冷感等の虚血性諸症状の改善。
用法:サルポグレラート塩酸塩として、1回100mgを1日3回食後経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
SE:出血傾向、胃の不快感、吐き気、動悸や頭痛
薬価:2016 アンプラーグ錠50mg:67.1円、100mg錠:113円、(サルポグレラート塩酸塩錠100mg「MEEK」:64.6円)
ADP受容体(P2Y12)阻害薬
チエノピリジン誘導体。
血小板の活性化には細胞内Ca2+濃度の上昇を伴う。
アデノシン二リン酸(ADP)は強力な血小板活性化因子の1つ。ADPがP2Y12受容体に結合すると、cAMP濃度が低下し、
反対に細胞内Ca2+濃度は上昇。
チエノピリジン系薬剤は、P2Y12受容体とADPとの結合を妨げ、cAMP濃度を強め、Ca2+濃度が上昇せず血小板活性化は抑えられる。
血小板凝集作用は不可逆的。
作用機序の異なる、チエノピリジン系とアスピリンの併用は強力で、コンプラビンはクロピドグレルとアスピリンの配合錠。
バイエルのサイト参照
チクロピジン(パナルジン:サノフィ)
重篤な肝障害や血液障害、血栓性血小板減少性紫斑病の報告例もあり、プラビックスの発売とともに、あまり使われなくなった。
手術前中止時期は、10~14日前とされる。
適応:A:血管手術および血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血流障害の改善。
B:慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛および冷感などの阻血性諸症状の改善。
C:虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療。
D:クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善。
用法:A:チクロピジン塩酸塩として、1日200~300mgを2~3回に分けて食後に経口投与する。
B:チクロピジン塩酸塩として、1日300~600mgを2~3回に分けて食後に経口投与する。
C:チクロピジン塩酸塩として、1日200~300mgを2~3回に分けて食後に経口投与する。
なお、1日200mgの場合には1回に投与することもできる。
D:チクロピジン塩酸塩として、1日300mgを3回に分けて食後に経口投与する。
いずれも、年齢、症状により適宜増減する。投与開始後2か月間は、原則として1回2週間分を処方する。
SE:重篤な肝障害、無顆粒球症など血液障害、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)など
薬価:2016 パナルジン錠100mg:50.7円
クロピドグレル(プラビックス:サノフィ)
空腹時の投与は避けることが望ましい。
手術前中止時期は、14日前とされる。
適応:A:虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制
B:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
①急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
②安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
C:末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制
用法:A:クロピドグレルとして75mgを1日1回経口服用するが、年齢、体重、症状によりクロピドグレルとして50mgを1日1回。
B:服用開始日にクロピドグレルとして300mgを1日1回経口服用し、その後、維持量として1日1回75mgを経口服用する。
注意2:アスピリン(81~100mg/日)と併用する
C:クロピドグレルとして75mgを1日1回経口服用する。
SE:重い副作用の発現は少ない。
重大な出血、TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)、間質性肺炎、血液成分の異常、肝臓の重い症状など
薬価:2016 プラビックス錠25mg:80.3円、75mg錠:201.2円、(クロピドグレル錠75mg「SANIK」:90.9円)
プラスグレル(エフィエント:第一三共)
空腹時の投与は避けることが望ましい。
手術前中止時期は、14日前とされる。
副作用が少ないイメージ。
適応:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
①急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
②安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
用法:服用開始日にプラスグレルとして20mgを1日1回経口服用し、その後、維持用量として1日1回3.75mgを経口服用する。
注意2:アスピリン(81~100mg/日)と併用する
SE:重い副作用の発現は少ない。出血、貧血、肝機能異常
薬価:2016 エフィエント錠2.5mg:201.2円、3.75mg錠:282.7円、5mg錠:359.8円、20mg錠:1,150.2円